お刺身やお寿司など生の魚を食べた後に、急に胃が痛くなったときはアニサキス症が考えられます。アニサキスとは海の魚の体内にいる体長10~30mmくらいの寄生虫の幼虫で、これが胃の中に入ると胃粘膜に食いつき、強い痛みが起こります。サバ、イカが有名ですが、基本的にはどの魚にもいます。自分で釣ってさばいた魚は特に危ないのですが、スーパーのお刺身にもいる可能性はあり要注意です。
人間の体内で成虫になることはないので、放っておいても1週間くらいで死んでしまいますが、胃の中にいる間は胃痛の症状が続きます。また非常に稀ですが、小腸に移動し粘膜に食いつくと、原因不明の急性腹症となります。生魚を食べて数時間後に胃の痛みが出現した場合はすぐに医療機関を受診し内視鏡を受けてください。内視鏡で胃の中を探すと、胃粘膜に食いついた虫体が見つかります。見つかれば鉗子という処置具を用いて簡単に取ることが可能で、取っただけで劇的に痛みは改善します。
いくらおいしいお刺身でも、食べた後に激痛におそわれたのではたまったものではありません。食べる前によく見てアニサキスがいないかを十分確かめるようにしてください。
人間にとって非常に重要な臓器である肝臓が徐々に弱る病気が慢性肝炎です。
慢性肝炎にはアルコール性や薬剤性など多くの原因がありますが、最も多くまた怖いのがウイルス性肝炎で、特にC型肝炎は自覚症状がないまま進行し慢性肝炎から肝硬変、そして肝臓癌の合併と悪い経過をたどる場合もあり要注意です。
日本人の感染者が150万人とも200万人とも言われており、自分がC型肝炎ウイルスに感染していることを知らない方も多くおられると思われます。
C型肝炎ウイルス陽性でも肝機能正常の場合もありますが、肝炎を起こしている場合はできる限り早く、肝硬変になる前に抗ウイルス薬であるインターフェロン治療を考えるべきです。現在はインターフェロンも新しい薬が使用できるようになり、さらには多剤との併用療法で治療効果も高くなってきています。
C型肝炎ウイルスの検査は採血によりその抗体を調べるだけですので、簡単に受けることができます。最近は健診にも一部組み込まれていますので、まだ調べられていない方はぜひ一度検査されることをおすすめいたします。
朝方や食後に胸やけのする方も多いのではないでしょうか。それは胃酸が胃から食道に逆流する病気、逆流性食道炎かもしれません。他にも酸っぱいのもが上がってくる感じや胸のつかえ感、喉のやけた感じなどの症状があります。西洋型の食事になり、肥満体型の方の増加とともに患者数も増えています。また腰の曲がった方、前屈みになる仕事の方などにも多く、消化器内科の外来では非常にポピュラーな疾患になっています。
内視鏡的には胃の入り口が開いており(食道裂孔ヘルニアといいます)、食道の下の方が赤くただれたりしています。食道に炎症の所見がなくても、食道裂孔ヘルニアがあり、逆流症状があれば胃食道逆流症という診断をつけるようにもなってきました。
逆流性食道炎と言われた方は油ものや甘いものは控え、消化の良い食事とし、体重を増やさないように気をつけてください。それでも症状のある場合は胃酸を押さえる薬が非常に良く効きますので、消化器内科に受診されて検査や治療に関して相談される事をおすすめいたします。
ピロリ菌の感染により慢性胃炎が進行し、その粘膜に胃がんが発生します。
ピロリ菌陽性者で胃がんになるのは1,000人に4人くらいで、特になりやすいと言うほどではありませんが、逆にもともと胃にピロリ菌がいない場合はほぼ100%胃がんにはならないと思われ、そういった点ではピロリ菌が胃がんに大きく関係していると言えるでしょう。
さてそれではピロリ菌を退治した場合は胃がんのリスクが減るのでしょうか。
多分高齢の方は慢性胃炎が進んでいる場合が多く、その時点で除菌してもリスクは変わらないかもしれません。しかし若いうち(50才以下くらい)、つまり慢性胃炎が進行する前に除菌をした場合は胃がんになるリスクが減る可能性があります。若いうちに一度はピロリ菌に感染しているかどうかを調べられ、陽性の場合は除菌治療することを考えられても良いのではないかと思います。
日本人も若い世代はピロリ菌感染者がどんどん減ってきています。
今は胃がんの死亡率はまだまだ高率ですが、ピロリ菌感染の減少とともに将来は胃がんも減少する事が予想され、いずれはまれな病気になると思われます。
消化器内科とは胃、大腸をはじめ肝臓、胆のう、すい臓など、お腹の病気を診る内科です。 急性胃腸炎や胃潰瘍、肝炎などポピュラーな病気から、胃がん、大腸がん、肝臓がんなどの悪性疾患など幅広い疾患が含まれます。
昔は胃がんや肝臓がんを見つけても、治療は外科に依頼することが多かったのでしょうが、最近は胃がんでも小さなものは内視鏡で治療できるようになりましたし、肝臓がんもエコー下の焼灼治療が可能になり、消化器内科の仕事は増えています。
しかし逆に胃がん、肝臓がんは今後減少していくと思われます。
C型肝炎ウイルスの発見後、輸血での感染がほぼ無くなり、さらにインターフェロン治療により肝硬変、肝臓がんの発生が減少します。またピロリ菌が胃潰瘍や胃がんの原因であることがわかり、除菌治療により胃がんのリスクを減らす事ができるようになりました。若い世代はピロリ菌感染者が減少しており、除菌治療が広がればさらに将来の胃がんは減少するものと思われます。
病気の発症そのものを減らす事により、将来仕事が減っていくのが消化器内科医である私たちの夢でもあるのです。
従来の胃の内視鏡(いわゆる胃カメラ)は口から挿入して食道や胃を観察する検査ですが、 経鼻内視鏡とはその字の通り鼻から内視鏡を挿入して観察する検査です。
最近テレビの健康番組や新聞などで取り上げられたり、TVコマーシャルでも放映されたりしており、 見かけられた方も少なくないと思います。経鼻で用いる内視鏡は、太さが先端約5mmと細く、 操作性も以前のものと比較して格段に改善され、そのためここ数年で使用する医療機関が増えてきています。
ここでは経鼻内視鏡の良い点、悪い点などをお話しいたします。
1. 楽に受けられる
鼻の中を通り真上からのどを通過するので、嘔吐反射が非常に少ないのが経鼻内視鏡の特徴です。
嘔吐反射とは、舌の奥を押さえた時に起こる“おえっ”とする反射で、 口から挿入する従来の内視鏡では少なからず起こります。
これが内視鏡に抵抗を感じる原因の一つなのですが、経鼻内視鏡はその点では非常に楽に受ける事が可能なのです。
2. 安定剤を使わなくても大丈夫
口からの内視鏡は嘔吐反射があるため、人によっては苦しい検査です。
そのため安定剤を注射して受けていただくことが多いのですが、 その場合内視鏡検査後に時間くらい休んでいただく必要があります。
その点経鼻内視鏡は嘔吐反射が少ないため、安定剤を使用しなくても大丈夫で、 検査終了後すぐに説明を受けることができます。
3. 検査中会話ができる
鼻から挿入しているため、検査中でも会話ができます。
自分の胃の中をモニターで見ながら説明を受けて、気になることは質問もできるのです。
1. 視野が暗く、画像が悪い
口からの内視鏡に比べ細い分、光源がやや暗く遠くが見づらく、画像もやや劣ります。
病気の見落としが多くなるほどではありませんが、よりじっくり観察する必要があります。
2. 鼻の中が狭い方は痛い事がある
人によっては鼻の中が狭く、また非常に敏感な場合があり、痛みを感じる事があります。
両鼻を観察して広く入れやすい方で挿入するのですが、 それでも入らない時もあり、その場合は口からの挿入に切り替えます。
3. 組織を取りにくい場所がある
胃にポリープや癌を疑う部分があった場合、鉗子という器具を使って、その表面の粘膜の一部を採取し検査をします。
経鼻内視鏡の場合細いため、ごく一部ですが粘膜を取りにくい場所があります。そのため粘膜を取るのに時間がかかったり、どうしても取れない場合は口からに切り替える場合があります。
実は経口か経鼻かどちらを勧めるかは内視鏡医にとってはジレンマでもあるのです。
本音を言いますと従来の経口の内視鏡の方が明るく見やすく、画像も良いので、安心して検査をする事ができます。
しかし実際は圧倒的に経鼻内視鏡の方が楽に受けてもらえるので、より多くの方に楽に簡単に検査を受けてもらうためには経鼻内視鏡の方が良いだろうと思います。
内視鏡医にとって多少やりづらい面もあるのですが、より慎重により丁寧に行う事によって解決出来る問題です。
いままでは胃の内視鏡は苦しい検査だというイメージがあり、敬遠されていた方も多いでしょう。
しかし経鼻内視鏡なら誰でも楽に受けられる簡単な検査だという事が一般的になり、より多くの方が受けられるようになれば、今までよりも早期で発見される癌も多くなり(つまり治る段階の癌で見つかる事が増える)、またピロリ菌に感染している胃が見つかり、除菌を受けられる方が増えると思われます。
それによって胃の病気で苦しめられる方が少なくなるでしょう。いままで検査を敬遠されていた方も、一度鼻から受けてみませんか。
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2019 医療法人 湘樹会 すが内科クリニック / すが皮ふ科